商品購入や問い合わせなどの成果が出ないホームページ(Webサイト)は、掲載している情報量ではなく「知りたいこと」を外しているのかもしれません。この記事では、検索意図と価値観から、ネットユーザー1がアクセス時に抱く心理を読み解き、載せるべき情報の方向性と優先順位を決める視点を紹介します。
ホームページ(Webサイト)は、少なくとも一人のネットユーザーに閲覧されてはじめて意味を持ちます。誰からも訪問されないままでは、ドメインやサーバー費用、制作に投じたコストは残念ながら無駄です。では、アクセス数さえあればそれで十分な価値を生んでいるといえるのでしょうか。
少し視点を変えて考えてみましょう。
あなたもネットユーザーとして思い当たる場面が、いくつかあるかもしれません。
- 外注先をGoogle検索で見つけたものの、料金がページ上に記載されていない。問い合わせをすれば見積もりは得られるのだろうが、営業電話が増えそうで気が進まない。
- 家族で行くキャンプ場を予約する前にYouTubeでレビュー動画を視聴してみたが、トイレや炊事場などの事前に把握しておきたい情報がよく分からない。
- 自分と同じ悩みを抱える人のブログを見つけたが、広告バナーがスクロールのたびに表示されるので本文を落ち着いて読めない。内容には共感できたが閲覧を断念してしまった。
これらはいずれも、ネットユーザーが「本当に知りたい情報」をホームページ(Webサイト)から取得できていない場面です。
ネットユーザーが知りたい情報
もし、あなたのホームページ(Webサイト)に「アクセスはそこそこある」のに、資料請求・メルマガ登録・お問い合わせ・広告収入などの成果が思うように上がっていないとしたら、ネットユーザーの欲求を満たすだけの情報が用意されていないのかもしれません。
「最初に見せる情報」を考える
検索エンジン(Google検索やYahoo!など)経由でWebサイトへのアクセスが多く発生している場合、まず意識したいのは「ネットユーザーはどんな気持ちで検索しているのか」という視点です。
- 「どのような気持ちで検索キーワードを打ち込んだんだろう」
- 「何を期待して、このページをクリックしてくれたんだろう」
こうした問いかけは、ネットユーザーの検索意図2を確かめるための入り口です。「検索してきた人の気持ち」に応えるページであることが、ホームページ(Webサイト)の成果を大きく左右します。
検索意図とは、ネットユーザーが検索する「目的」とその「コンテキスト(背景・文脈)」を意味します。検索意図に合致した情報が掲載されていないホームページ(Webサイト)は、アクセスがあってもネットユーザーの欲求を満たしていないので、期待する成果が発生しません。
検索意図にまっすぐ応えるコンテンツ
検索意図の理解を深めるために、例としてあなたが「インフルエンザの予防接種ができるクリニックをインターネットで調べている」としましょう。
Google検索で「インフル予防接種 地名(例:六本木)」3と入力し、クリニックのWebサイトにアクセスする。ところが知りたい「診療時間」がどこに書いてあるのか分からない。診療時間が載っているページへのリンクも見当たらない。結局、そのサイトから離脱し、改めて検索を再開することになった。
これは、ネットユーザーの欲求を満たしていない残念なケースです。
このときのネットユーザーの検索意図は、次のように整理できます。
- 閲覧する目的:インフルの予防接種の予約をしたい
- 閲覧する背景(文脈):家族や職場の同僚に迷惑をかけたくないので早めに対策したい
- 知りたい情報:仕事の合間に受診できるかを判断したいので、診療時間と住所、予約方法を知りたい
つまり、クリニックのページ冒頭には、次の情報がはっきり書かれていることが重要です。
- インフル予防接種の受付期間
- 診療時間・休診曜日
- クリニックの住所とアクセス
- 予約方法
予防接種の重要性や副作用、取り扱っているワクチンの種類といった情報も大切ですが、インフルの予防接種の予約をしたい場合、これらは「まず知りたい」と思う内容ではありません。
ページで「最初に見せる情報」は、ネットユーザーの検索意図にまっすぐに応えるコンテンツ4です。検索意図を的確に捉えようとする姿勢が、ページに盛り込むべき情報や構成を考える出発点となります。
閲覧する目的・背景(文脈)と知りたい情報を考える
ホームページ(Webサイト)はいくつかの種類に分類できます。次の表は「およその分類」とネットユーザーの検索意図を「閲覧する目的・背景(文脈)」と「知りたい情報」に区別した概要です。
種類別 ネットユーザーの閲覧文脈と知りたい情報
| 種類 | 閲覧の目的・背景(文脈) | 知りたい情報 |
|---|---|---|
| 企業サイト | 安心してサービス利用や商品購入ができるかどうか、その企業が信頼できるかを確認したい。 | 代表者の経歴・会社概要・問い合わせ方法など |
| サービスサイト | 自分の課題解決や欲求を満たすサービスなのかを、品質・費用などで判断したい。 | 導入事例・利用者の声、料金・利用規約など |
| 採用サイト | 自分が働くイメージを持てるのか情報を集めたい。前職の不満が解消されるのか知りたい。 | 社員インタビュー/選考フロー/給与・福利厚生/職種・キャリアパスなど |
| 店舗サイト(カフェ・美容室・レストランなど) | 店舗に行くかどうかを判断するために、運営に関する情報を知りたい。 | 営業時間・場所(地図)・駐車場の有無・予約方法・メニュー料金など |
| クリニック・病院サイト | そこで受診するかどうかを判断するために、診療時間・休診日・医者の経歴を知りたい。 | 診療科目・対応できる症状・診療時間・場所(地図、地方なら駐車場の有無)・予約方法・医師の経歴など |
| ECサイト | 購入商品を比較するために料金・口コミ・配送にかかる日数を比較したい。 | 商品の価格/在庫・発送日/返品・交換ポリシー/レビュー・口コミなど |
| 学校・教育機関サイト(大学・専門学校・塾など) | 学校選びで失敗したくないので卒業後の進路や学費、合格実績などの情報を知りたい。 | 学科・コースの内容/学費・奨学金/オープンキャンパス・説明会情報/卒業後の進路・就職実績/合格実績/アクセスなど |
| 公共機関・自治体・NPOサイト | 各種手続きの方法や受付時間・生活に必要な情報(防災など・支援制度)を知りたい。 | 各種申請・手続きの案内/窓口・電話番号・受付時間/地域のニュース/災害・緊急情報/制度・補助金の内容など |
| イベント・セミナー・カンファレンスサイト | 関心が湧く内容かどうかを判断する情報(イベントのテーマ・登壇者のプロフィール)を知りたい。 | イベントのテーマ/登壇者プロフィール/日時・場所・オンラインかどうか/参加費・支払い方法など |
| 技術ブログ・マーケ・ビジネス系ブログ | 自分の知見を広めるため、技術的な問題の解決方法や実装例を知りたい。施策のアイデアを得たい。 | エラーや課題の具体的な解決手順/具体的な施策の手順・KPI・数字/最新トレンドなど |
| レビューブログ・動画 | 購入後に後悔したくないので、本当に利用した人の口コミや利用の様子を知りたい。 | 使ってみたリアルな感想/使用している様子がわかる写真や動画など |
| 生活系ブログ(子育て・介護・闘病・趣味・ダイエットなど) | 今抱えている悩みを解決したいし、共感もしてほしい。同じ悩みや関心を持つ人の体験や解決方法を知りたい。 | ブログ運営者の価値観/精神的なつらさ・不安への共感・励ましなど |
ホームページ(Webサイト)のコンテンツを設計する
ホームページ(Webサイト)のページ設計のゴールは、ネットユーザーの検索意図を満たすことです。掲載するコンテンツの内容と掲載先のページを整理し、ページ同士の関係(階層)を設計して、ユーザーが迷わず閲覧できる構成が重要です。
ページの構成を考える
あなたが情報発信したい内容をネットユーザーの検索意図を満たすようにページの構成を考えます。ただし、奇抜な構成である必要はなく、類似のホームページ(Webサイト)を参考に、ページ間の関係を把握しやすくなることを目指してください。その理由としてネットユーザーの認知負荷を下げる狙いがあります。
検索意図を満たすページをどのように作成すればいいのか、考え方のヒントとして店舗サイトのページ構成案をサンプルで作成しました。ページの種別ごとに役割と概要をまとめた次の表を参考にしてください。
サンプル 店舗サイトのページ構成案
| ページ種別 | 検索意図を満たす役割 | コンテンツの概要 |
|---|---|---|
| トップ | 「知りたい情報」がすぐに把握できること。各ページへのリンク | 店名・コンセプト一言/営業時間・定休日/住所/電話/「メニュー」「予約・注文」への導線/店内写真 |
| 店舗情報・アクセス | 「行ける」を確定させるページ | 住所(ビル名/階数まで)・地図・最寄駅/出口・駐車/駐輪・混雑しやすい時間帯・電話 |
| 営業時間 | 「今営業している?」に単独で答えるページ | 営業時間と休業日。変則的ならカレンダー形式で表示 |
| メニュー | 「何が飲める/食べられる?」「料金は?」を確定させるページ | 品目名・説明・価格・写真 |
| 予約・問い合わせ | 「席を確保したい」を完了させるページ | 電話番号やLINEなどの連絡先・受付時間 |
| お知らせ・イベント | 季節限定メニュー、臨時休業、新作等の変化を伝えるページ | 臨時休業の場合は、トップ、店舗情報・アクセス、営業時間にも掲載 |
| こだわり・ストーリー | 「どんな店?」への回答ページ | 店のコンセプトや運営者のプロフィール、店内の様子がわかる画像・動画 |
| よくある質問 | 「不安」を事前に潰すページ | Wi-Fi・電源・禁煙・子連れ・ペット・支払い方法・席の利用時間・撮影可否など |
検索しそうなキーワードをページ単位で考える
ホームページ(Webサイト)を構成する各ページを作成する際、ネットユーザーが検索しそうな単語やフレーズを想定します。同じ情報を探している場合でも、ネットユーザーによっては異なる単語やフレーズを使って検索しますので注意が必要です。
ユーザーがコンテンツを探すときに検索しそうなキーワードを考えてみましょう。そのトピックについてよく知っているユーザーは、よく知らないユーザーとは異なるキーワードを検索クエリ5で使用するかもしれません。たとえば、「シャルキュトリ」と検索するユーザーもいれば、「チーズボード」と検索するユーザーもいます。こういった検索行動の違いを予測し、読者を意識して執筆することで、検索結果でのパフォーマンスに良い影響を与えることができます。
とはいっても、すべての検索方法を予測する必要ありません。Google の高度な言語マッチング システムは、ページとさまざまな検索語句との関連性を把握できるため、ページにそのとおりの語句を明示的に使用する必要はありません。
読者の検索キーワードを予測する 検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド6
前述の検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイドから引用もある通り、ネットユーザーがあなたのホームページ(Webサイト)や店舗をどれだけ事前に知っているか(認知度)によって、検索に使うフレーズは変わります。
たとえば、まだ店名を知らないネットユーザーは、「エリア+ジャンル」という形式のフレーズで広く候補を探し、店名を知っているユーザーは「店舗の名称」で目的のページにたどり着こうとします。このような検索行為の違いを次の2つに整理します。
- 一般検索:特定のカテゴリーから幅広く情報を集める検索行為。
- 例:六本木 カフェ、東京駅 ラーメン
- 指名検索:ブランド名や商品名・店舗名などの固有名称を指定して検索すること。
- 例:ルノアール六本木、東京駅 松戸富田麺絆
ホームページ(Webサイト)の各ページで検索キーワードを考えるときは、ページの役割に合わせて、一般検索と指名検索の両方を想定しておくことが重要です。次の表は、店舗サイトにおけるページ別の検索キーワード案です。
サンプル 店舗サイトのページ別 検索キーワード案
- 一般検索:業態・最寄駅・エリア(地域名)・営業時間など
- 指名検索:{店名}
| ページ種別 | 検索キーワード | 解説 |
|---|---|---|
| トップ | {店名} /{店名} エリア/エリア 業態/最寄駅 業態 | 「この店で合ってる?」「候補としてアリ?」を最短で判断したい入口。指名検索{店名}と、非指名検索(近く・エリア・業態)の両方を意識すること |
| 店舗情報・アクセス | {店名} アクセス/{店名} 行き方/{店名} 住所/{店名} 駐車場/最寄駅 {店名} | 来店判断が検索意図にある。「アクセス」「行き方」「駐車場」など「移動の不安」を解消する語が出やすい |
| 営業時間 | {店名} 営業時間/{店名} 定休日/{店名} 今日 営業/{店名} 何時まで/{店名} 何時から/{店名} ラストオーダー/ | 「今営業している?」は来店に直結する重要な検索意図。最短の回答が求められるので、専用ページに寄せると意図と一致しやすい |
| メニュー | {店名} メニュー/{店名} ランチ/{店名} 料金/エリア 業態 ランチ | 来店前に知りたい「何がある/予算感/どんな体験ができるのか」などを抑える |
| 予約・問い合わせ | {店名} 予約/{店名} 電話番号/{店名} 問い合わせ | 来店決定段階で「電話番号」「席は空いているのか?」「予約方法は?」などの需要が発生 |
| お知らせ・イベント | {店名} 臨時休業/{店名} 営業日 変更/{店名} 限定メニュー/{店名} イベント/{店名} 新作 | 臨時休業は「行ったのに閉まってた」を避けたいニーズ。限定・イベントは興味喚起になる |
| こだわり・ストーリー | {店名} こだわり/{店名} コンセプト/{店名} 店主/{店名} 運営会社 | 比較検討している段階で「この店を選ぶ理由」を確認する検索が発生 |
| よくある質問 | {店名} Wi-Fi/店名 電源/{店名} 子連れ/{店名} ペット/{店名} 支払い方法/{店名} 禁煙 | 電源が使えるカフェの場合、{エリア} カフェ 電源の検索需要も想定 |
検索意図の背景にある価値観を考える
検索意図の理解は、「何を知りたいか」だけでは十分ではありません。ネットユーザーが何を重視して意思決定しているのか、その判断軸(価値観)まで踏み込むことで、質の高いコンテンツが仕上がり、ホームページ(Webサイト)の成果も伸びやすくなります。
有益で満足度の高いコンテンツを作成するヒント
有益で満足度の高いコンテンツを作成するためには、検索意図をもう一段深く捉える必要があります。「検索クエリとは?検索意図に隠れた3つの価値観でニーズを満たすコンテンツを考える」では、検索クエリの裏にある本音を整理するための視点を体系的に解説します。
このページの脚注・外部リンク
- ネットユーザーとは、インターネットを利用するすべての人々の総称です。 ↩︎
- Google のランキングシステムは、検索で使用した単語や言い回しの語句(フレーズ)からネットユーザーの意図を理解することを目指し、関連性の高いページから表示するよう設計されています。
参照:Google によるランキング結果の決定方法 ↩︎ - Google検索のAIモードで検索する場合、「キーワードの羅列」よりも 会話文(条件つきの質問) になりやすい可能性があります。例:六本木でインフルエンザ予防接種できるクリニックは?診療時間も知りたい。 ↩︎
- コンテンツとは、ホームページ(Webサイト)内で掲載する情報(文章、画像、図表、動画、FAQ、手順など)を意味します。 ↩︎
- 検索クエリとは、検索エンジン(Google検索やYahoo!など)を使うときに使用する単語や言い回しなどのフレーズです。 ↩︎
- 参照:読者の検索キーワードを予測する 検索エンジン最適化(SEO)スターター ガイド ↩︎