ホームページ(Webサイト)で成果を出すには、ネットユーザーが「知りたい情報」を提供する必要があります。この記事では、検索する理由を価値観(コスト/体験/課題解決)から考え、ネットユーザーが抱く心理を読み解き、載せるべき情報を決める視点を紹介します。
SEOを調べると、「検索されそうなキーワードを決めてからコンテンツを作ろう」という話が目につきます。キーワード調査ツール1を使って、検索回数や難易度などの数値を根拠にテーマを決める方法もあります。キーワードはコンテンツ2の方向性を決める助けになりますが、それだけで上位表示できるのでしょうか。
Google 検索セントラル3では、検索結果のランキングシステムを次のように述べています。
Google の自動ランキング システムは、検索エンジンでのランキングを操作することを目的として作成されたコンテンツではなく、ユーザーにメリットをもたらすことを目的として作成された、有用で信頼できる情報を検索結果の上位に掲載できるように設計されています
Google 検索セントラル :有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成4
ここでいう「ユーザーにメリットをもたらす情報」とは、検索した理由(ニーズ)をきちんと満たす情報のことです。検索キーワードを決めるだけでは、ユーザーが本当に知りたいことまでは見えません。検索意図にまっすぐ応えるコンテンツを作るためには、ネットユーザーの検索した背景を考える必要があります。
検索意図を理解する:検索クエリの分類・深さ・価値観
検索エンジン(Google検索やYahoo!など)を使うとき、私たちは検索窓に単語や言い回しなどのフレーズを入力します。こうした入力語句を「検索クエリ(Search Query)」と呼びます。「検索クエリ」という言葉は、英語のquery(質問・疑問)に由来しています。

Googleの検索品質評価ガイドライン5(2025年9月11日改訂版)によると、検索クエリは、次のいずれか、もしくは複数の意図を同時に持つものとして考えると理解しやすいとしています。
検索クエリの4分類(Know/Do/サイト/来店)
- Know クエリ:知識や情報を知りたいときや、簡単な事実を調べる検索クエリ
- 例 バナナ カロリー:バナナ1本に何キロカロリーあるかという「単純な事実」を知りたい
- Doクエリ:何かの目標を達成したり、活動に参加したりしようとしている検索クエリ
- 例 ドラマ タイトル名 再生:ドラマを再生して視聴したい
- Webサイトクエリ:特定のWebサイトやWebページを探している検索クエリ
- 例 ユーチューブ:YouTube(またはアプリのトップ)にアクセスしたいクエリ
- Visit-in-personクエリ:特定の企業・組織、企業カテゴリ(業種)を探している検索クエリ
- 例 ラーメン 渋谷:近所のラーメン屋を探しているクエリ
しかし、このGoogleの検索品質評価ガイドラインにある検索クエリの分類は、表層的な検索の目的を理解するうえでは有用であるものの、本当の意図を捉えるには十分ではありません。
検索意図の深さ(顕在・潜在・インサイト)を読み解く
検索クエリに含まれる検索する動機や理由(検索意図)は、「何を知りたいか」を単に示すものではなく、その背後にある心理の深さによって階層をなしています。
つまり、ネットユーザーは検索エンジンの前で、自分の欲求や不安を全て言語化しきれているわけではなく、顕在(表面のニーズ) → 潜在(ぼんやりした感情) → インサイト6(核心となる本音)という三層構造で意図が現れます。

たとえば、Know クエリの例であるバナナ カロリーを検索するネットユーザーは、バナナ1本に何キロカロリーあるかという「単純な事実」を知りたい(表面のニーズ)だけでなく、「ダイエットに失敗したくない」というぼんやりとした感情のさらに奥にある「昔のような身体に戻りたい」という切実な本音・動機が隠れています。
検索クエリを左右する3つの価値観(コスト・体験・課題解決)
検索窓に入力する数語の検索クエリは、表に出ているニーズの一部を示すにすぎず、潜在(ぼんやりした感情)から インサイト(核心となる本音)に至るまでの、検索行動の背景にある心理を十分に捉えきれないことがあります。ネットユーザーの「検索意図」をより深く考えるうえで、価値観を知ることが役立ちます。
ここでは、検索クエリに影響を与える価値観を次の3つに整理して考えていきます。
- コストをかけたくない(かけたい)
- 体験したい
- テーマ(考えや課題)を解決したい
[1]コストをかけたくない(かけたい)
「コスト」を重視する価値観は、単に「安い」を探しているとは限りません。コストには、主に価格・時間・難易度の3つの要素があります。たとえば、「当日」「最短」「すぐ」といった時間の言葉や、「初心者向け」「簡単」「サポートあり」といった難易度の言葉も一緒に検索されやすくなります。

価格を重視する価値観
◾️安いから欲しい
価格が安いものはもちろんですが、「この価格でこの品質ならコスパがいい」と判断する場合があります。たとえば、少し傷があるだけの食品を割安で提供するフードロス関連サービスに興味がある人は、この価値基準が強いネットユーザーと言えるでしょう。
◾️高いから欲しい
一方、富裕層向け会員制サロンのように「高い=ステータス」という価値基準も存在します。高額な利用料を支払うことで、限られた人だけが出入りできる空間にアクセスできる。「あえて高いものを選ぶ」という行為が、自己表現の一部になっています。
時間を重視する価値観
◾️素早く利用できる・短時間で手に入る
今すぐほしいという即時性は、インターネットで強く出やすい欲求で、ネット通販との相性が良い価値基準です。「当日配送」「最短◯時間」といった表現に敏感に反応する人たちは、時間コストを最小化することを重視しています。
◾️ゆったりと時間を使える
また「あえて時間を味わう」という価値基準もあります。移動時間も含めて旅そのものを楽しめる長距離列車や、読書や思索に浸れるロングステイ向けのラグジュアリーホテルなどの利用は、この価値基準にもとづきます。
難易度を重視する価値観
◾️取扱が簡単・サポートが充実している
取り扱いが簡単であることやサポートが充実していることを重視している場合、初心者向けの商品を検索する傾向があります。たとえば高齢者向けのスマートフォンやWebサイト制作サービスなどです。専門用語を避け、手順を減らしてあげることが「選ばれる理由」になります。
◾️難しいから挑戦したい
一般的には「難しくないこと」に価値があるとされますが、「難しいから楽しい」という価値基準もあります。たとえば、「ブートキャンプ式」と呼ばれる高難度・高負荷の実践型カリキュラムに挑戦したい人たちは、簡単に身につくスキルでは満足しません。
[2]体験したい
「体験したい」という価値観は、専門性・希少性・限定といった体験価値を強める要素が結びつきます。たとえば「バリスタ体験 焙煎指導」のようにその道に特化した体験を探す検索になりやすく、希少性なら「洞窟レストラン」といっためずらしさを手がかりに探します。限定であれば「期間限定 アフタヌーンティー」、“今だけ・ここだけ”を示す言葉が検索クエリになります。

専門性を重視する価値観
◾️特定分野に特化しているから体験したい
専門性を軸に体験を求める人にとって、重要なのは「その道に特化している」です。たとえば、単なるマッサージではなく、足裏に特化した施術を探す。こうした検索行動には、「専門家に触れてみたい」という明確な価値基準があります。
◾️プロが使用しているから体験したい
「プロが使用している」という事実が体験を求める価値になります。アスリートが愛用する睡眠環境、美容の専門家が推薦する美容液。こうした情報に強く反応するネットユーザーは、専門性に裏打ちされた信頼性を重視しています。
希少性を重視する価値観
◾️数が少ない(めずらしい)から体験したい
「めずらしさ」に価値を感じるネットユーザーは少なくありません。たとえば、「天体観測 キャンプ 場」のように検索して、どこにでもあるキャンプ場ではなく都会では味わえない天体観測を楽しむことに価値をおきます。
◾️ありふれていないから体験したい
また、「話題の」「行列のできる」といったラベルも、希少性を帯びた体験として機能します。SNSで見かけた人気のカフェを行き、噂のパフェを注文し、その写真を自分のアカウントにも投稿する行為もこの価値基準がベースにあります。
限定を重視する価値観
◾️期間限定だから体験したい
今しか手に入らないから価値があると考えるネットユーザーもいます。「期間限定 イチゴビュッフェ」「今週末限定 冬の夜景ライトアップ」といった検索には、「逃したくない」という焦りと期待が同居しています。
◾️私だけの体験をしたい
招待制のイベントや、上位顧客だけが参加できる先行体験会のように、限られた人だけが体験できることに価値を見出す人もいます。「自分だけが特別に体験できる」ことそのものが、喜びにつながる価値観です。
[3]テーマ(考えや課題)を解決したい
「テーマ(考えや課題)を解決したい」という価値観では、社会性・自己実現・悩みといった問題意識が先にあり、その流れの中で検索クエリが組み立てられます。たとえば、社会性なら「フェアトレード コーヒー」のような検索クエリになり、自己実現なら「未経験 デザイナー転職」「似合う髪型 診断」といったなりたい自分に近づけるかを軸に探します。悩みの解決であれば「肩こり 治し方」「WordPress エラー」のように、いま困っている状態を解決するための具体的な手がかりを求める検索が中心になります。

社会性を重視する価値観
◾️社会貢献度に共感できる
社会貢献度を重視するネットユーザーは、「自分のお金や時間をどこに投じるか」で世界との関わり方を選んでいます。たとえば、「フェアトレード コーヒー 通販」のようなキーワードで検索する人は、その選択が社会にどんなインパクトをもたらすかを見ています。
◾️ビジョンに共感できる
もしくは、製品を販売している企業やサービスを提供している事業者が掲げるビジョンに共感できることを大切にする価値基準もあります。企業メッセージやサステナビリティページ、社会貢献の具体的な事例は、「ここにお金を使いたい」と判断するための、重要な材料です。
自己実現を重視する価値観
◾️本来の自分になれる
今の自分は「仮の姿」で「本来の自分」になることに価値を感じるネットユーザーもいます。たとえば、いま体型が崩れているのは運動不足とストレスによる過食が原因であって、本当の自分はスリムな体型のはずだ、と考えるようなケースです。この場合、単なる体重減少ではなく、「本来の体型に戻るための方法」を探す検索行動が始まります。
◾️憧れの〇〇になれる
自己実現を軸に検索するネットユーザーは、「今の自分を更新できるかどうか」で選択肢を見極めます。「30代 未経験 デザイナー転職」「憧れの女優風 ショートヘア カット」などの検索には、「こうなれたらいい」がはっきりと投影されています。
悩みを重視する価値観
◾️特定の悩みを解決できる
悩みの解決は、もっとも検索に直結しやすい軸です。「肩こり 治し方」「耳鳴り 原因」といった検索クエリの背景には、「この状態を何とかしたい」「解決のヒントがほしい」という切実さがあります。
◾️特定のトラブルを解決できる
特定のトラブルを解決したいケースも同様です。「玄関鍵 回らない」「WordPress エラー」といったキーワードの裏には、「いますぐ解決したい」という緊急性があります。こういう状況でネットユーザーが求めるのは、抽象的な理屈ではなく「具体的に何をすればいいか」が分かる確かな手順が示されている情報です。
検索意図を満たすコンテンツを作成する
ホームページ(Webサイト)は、運営者側の狙いを切り離して考えることはできません。具体的には、次のような成果を目指して設計されることが一般的です。
- 企業サイト:資料請求や見積もり依頼を経由して顧客を増やしたい。
- 店舗ビジネス:来店数を伸ばし、リピーターを育てたい。
- アフィリエイトブログ:広告収益を積み上げたい。
ホームページ(Webサイト)の狙いは異なっても、「成果を生み出す」という点は共通しています。
一方で、ネットユーザーの価値観を置き去りにしたまま制作を進めると、これらの狙いを実現するのは極めて難しくなります。せっかくあなたのホームページ(Webサイト)にアクセスが発生しても満足できるコンテンツ7でない場合、ネットユーザーは離脱し、すぐに再検索へ戻ってしまうからです。
ネットユーザーの価値観とあなたの提供価値を重ねる

この記事では、検索クエリを左右する要素として、コスト・体験・テーマの3つの価値観があることを整理しました。ネットユーザーの価値観とあなた提供価値の重なりを広げることが、優れたコンテンツの到達点となります。
このページの脚注・外部リンク
- ラッコキーワードやMIERUCAなど ↩︎
- コンテンツとは、ホームページ(Webサイト)内で掲載する情報(文章、画像、図表、動画、FAQ、手順など)を意味します。 ↩︎
- Google 検索セントラルとは、コンテンツが適切なユーザーに表示されるようにするためのサポートツールです。 ↩︎
- 参照:Google 検索セントラル :有用で信頼性の高い、ユーザーを第一に考えたコンテンツの作成 ↩︎
- 参照:General Guidelines September 11, 2025 ↩︎
- インサイトとは、生活者自身も気づいていない、潜在的な欲求や行動の動機。参照:インテージマーケティング用語 ↩︎
- 参照:検索意図にまっすぐ応えるコンテンツ ↩︎